東京医科歯科大学 整形外科

東京医科歯科大学整形外科7

膝前十字靭帯(ACL)損傷

 前十字靭帯(ACL)は、大腿骨と脛骨を膝関節の中で結ぶ強固な靭帯です。球技や格闘技、陸上競技など俊敏な動作が求められるスポーツで、膝のゆるみやひねりに対して動きを安定化させる重要な役割を果たしています。バレーボールやバスケットボールといったスポーツのジャンプ動作の着地時や、サッカーやスキー等の切り返し動作時、柔道やラグビーの接触時に損傷することが知られています(図1)。内外側半月板や内外側側副靭帯といった、膝の機能を維持するためにACL同様重要な組織も同時に損傷することがあります。従来、スポーツを活発に行わない方の場合、ACL損傷は放置しても日常生活では困らないとされてきました。しかし近年、2次的に生じる半月板損傷や軟骨損傷、将来的な変形性膝関節症への進行が問題視されており、再建手術による機能回復が年齢、スポーツレベルを問わず標準的な治療法となっています。

図1 前十字靭帯損傷のメカニズムの解析

前十字靭帯再建術

 東京医科歯科大学整形外科膝・スポーツ班では、現在全国的に行なわれている膝屈筋腱を用いた2重束再建術を1994年から全国に先駆け施行してきました。近年では詳細な解剖研究やバイオメカ研究に基づいて、損傷靱帯の遺残組織を温存した新たなアプローチにより正確かつ再現性の高い2重束再建術を行っており、高いスポーツ復帰率と患者満足度を誇っています。

図2 2重束再建術

 ACLを含めた複合靭帯損傷に対する再建術やACL再建後の再損傷に対する手術を含めると、当施設では年間100例以上の手術を施行しています。

 個々の患者のニーズに応じるため、骨付き膝蓋腱を用いた再建術も含め、必要な膝の機能を獲得するために最適な術式を施行します。(例:膝立ちの動作が多い→骨付き膝蓋腱を用いると腱を採取した膝前面が刺激されてしまうため、ハムストリングを用いる。柔道やバレエで膝を深く曲げる筋力を低下させたくない→ハムストリングを採ると、深く膝を曲げる筋力が低下するという報告があり、骨付き膝蓋腱を用いるなど)

 元々、ACLにかかる負担が大きいと予想される方(手術前麻酔下での診察時に、膝のひねりに対する不安定性が極端に大きな症例、膝が反り返って伸びる症例、ACL再建術後の再断裂例)の場合には、より確実な安定性の獲得を目指し、骨付き膝蓋腱を用いた再建術に、膝関節の前方外側に存在するひねりに対する制動となっている部分(前外側構成体)の再建も行っています。

 手術時間は1.5‐2時間です。半月板縫合などの合併損傷に対する手術が必要な場合はさらに1時間程度長くなります。入院は1週間前後(手術前日~術後5日前後)を目安としています。また当院スポーツ医学診療センターと連携しており、靭帯再建患者に対し、受傷直後から可及的早期の競技復帰を視野に入れた、アスレチックリハビリテーションを行っています。より早期の競技復帰とパフォーマンスの向上、再受傷率の減少を目指し日夜取り組んでいます。

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