基礎研究

骨再生研究グループ(整形外科学)

人工骨や幹細胞、薬剤などを用いた骨再生を中心とした再生医療の研究を行ってきました。
また、骨折治癒促進や骨転移腫瘍、骨髄炎などに対する新しい治療法の研究も進めています。

メンバー

吉井 俊貴

先端医療開発学講座 整形外科学分野

教授 吉井 俊貴

Toshitaka Yoshii

専門:
脊椎脊髄外科

江川 聡

先端医療開発学講座 整形外科学分野

助教 江川 聡

Satoru Egawa

専門:
脊椎脊髄外科

橋本 泉智

先端医療開発学講座 整形外科学分野

大学院生 橋本 泉智

Motonori Hashimoto

専門:
脊椎脊髄外科

酒枝 健太郎

先端医療開発学講座 整形外科学分野

大学院生 酒枝 健太郎

Kentaro Sakaeda

専門:
脊椎脊髄外科

上杉 豪

先端医療開発学講座 整形外科学分野

大学院生 上杉 豪

Go Uesugi

専門:
脊椎脊髄外科

研究内容

骨再生グループの研究室では
1.人工骨の開発、評価
2.組織工学的手法を用いた骨再生
をメインテーマとして様々な試みを行っている。

1.東京医科歯科大学オリジナル(TMDU ORIGINAL)人工骨の開発

我々はハイドロキシアパタイトとタイプ1コラーゲンの複合材料である多孔質ハイドロキシアパタイト・コラーゲン複合体(HAp/Col)の開発をオリジナルに行った。HAp/Colは豚皮由来のタイプ1コラーゲンのリン酸溶液と水酸化カルシウムの懸濁液を反応させることで合成される。長さおよそ50nmのc軸方向に伸びたハイドロキシアパタイトのナノスケールの針状結晶がコラーゲン線維上に配向し、生体骨と同様のナノ構造をとっている。また、含まれるハイドロキシアパタイトとコラーゲンの重量比も80:20と生体骨と同等である。既存の焼結した多孔質人工骨が脆く崩れ易く使用時の操作性や加工性に難があるのに対し、HAp/Colを多孔体に形成した多孔質HAp/Colはスポンジ状の弾力性と優れた操作性、加工性を有している(図1)

メスやハサミで容易に加工できる Wetな状態では弾力性があり、移植母床にぴったリフィットする 

メスやハサミで容易に加工できる
Wetな状態では弾力性があり、移植母床にぴったリフィットする
図1: 東京医科歯科大学オリジナルの人工骨リフィット

動物実験、臨床治験では既存の人工骨よりも高い骨伝導能と、良好な吸収置換性が確認された(図2, HAp/Colに含まれるハイドロキシアパタイトはナノスケールであるため、ハイドロキシアパタイトの表面積が大きく吸収速度が速い)。また、スポンジ状の弾力性により、移植時に母床骨に隙間無くフィットするため、骨形成が母床骨から連続的に進展する。これに対し、既存の人工骨では母床骨との間に隙間が生じ、その部分に軟部組織が侵入してしまうことが確認された。さらに多孔質β-TCPを対照機器とした臨床治験においても、対照機器よりも高い有効性が確認され、2013年より国内臨床において使用され始めている(図3)。この人工骨は薬剤担体としての有効性も示されており、今後バイオマテリアル分野での活躍が大いに期待されている。

図2: リフィットによる骨再生

図2: リフィットによる骨再生

腫瘍、脊椎、骨折の手術で絶賛使用中

腫瘍、脊椎、骨折の手術で絶賛使用中
図3: HOYA Technosurgicalよりリフィット発売

2.組織工学的手法を用いた骨再生

骨髄間葉系幹細胞(Bone marrow derived stromal stem cells: BMSC)は骨髄液を培養することで容易に得られる。多分化能を有し、様々な組織の細胞に分化することができることから、骨組織をはじめとした様々な組織の再生医療への応用が期待されてきた。
BMSCを骨再生に使用する場合には、一般的に培養(BMSCの増殖)」、分化誘導(骨芽細胞への分化)、足場材への細胞導入という操作を経て移植材料とする。我々はこれらの過程に様々な工夫(①デキサメサゾン、BMPなどの薬剤存在下でのBMSCの培養増殖、②低圧環境下での担体への細胞導入、③自己血漿を使用した細胞導入)を加えることで、BMSCを用いた骨再生法の成績を格段に向上させることに成功している。その結果、これらの工夫を組み合わせることで、ヒトと同じ霊長類であるサルの5cmという巨大な大腿骨の骨欠損を再生させることができるようになった(図4)。しかしながら、同時にBMSCsを用いた骨再生の課題を見出すことになった。BMSCを用いた骨再生を臨床応用するためには、十分な細胞数を得るために継代培養を繰り返す必要があるが、BMSCは増殖を繰り返すことで分化能が低下してしまい、十分な骨形成が得られなくなってしまう。
そこで、現在我々はこの分化能低下のメカニズムの解明を目指した検討を行っている。その結果、BMSCは継代培養を繰り返すことで、骨形成能が低下し続けるだけでなく、骨形成を抑制することを確認した。つまり、継代培養によって発現する骨形成抑制因子の存在が明らかになった。この因子を同定するために、継代数の少ないBMSCと継代を繰り返したBMSCの遺伝子発現をマイクロアレイで比較し、BMSCに発現する骨形成抑制因子の候補を検討中である。様々な因子が候補に挙げられ、現在、各候補因子がBMSCの骨分化、骨形成能に与える影響の解析を進めている。

図4: 組織工学的手法を用いた骨再生

図4: 組織工学的手法を用いた骨再生

アットホームな雰囲気のなか、バイオマテリアル、分子生物学分野での研究、発表を日夜精力的に行っている。週2回の抄読会、週1回のmeetingがあり、最新知識のアップデートと情報共有を行い、問題解決の糸口を見つけ、イノベーティブな着想・発想と開発ができるようなシステムを構築している。
実験内容、対象についての相談も承ります。興味を少しでも持たれたら
責任者:早乙女進一 Sotome.orth@tmd.ac.jp までご連絡を!
研究室員一同心よりお待ちしております。

HP 図5

整形外科先端治療開発学 准教授 早乙女進一

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