東京医科歯科大学 整形外科

東京医科歯科大学整形外科7

転移性骨腫瘍(がんの骨転移)

がんの骨転移とは

現在、わが国において、がんは2人に1人が罹患する一般的な病気になっています。また、近年のがん治療の進歩によって、がんを患いながらも長期間の生活が可能な患者さんが増えています。どんながんであっても骨に転移する可能性はあり、がん患者数の増加とともに、骨転移を生じる患者さんの数も増えてきています。骨転移は、病巣が小さな初期の段階では特に自覚症状はありませんが、病変が大きくなると、痛みや骨折、神経麻痺を引き起こし(図1)、患者さんの生活に大きな支障を与えることもあります。

1図1 骨転移による病的骨折(左)と脊髄麻痺(右)

骨転移の治療について

これまで骨転移に対する有効な治療法は確立されていませんでしたが、近年のがん治療の進歩により、早期から治療を開始すれば、骨転移の進行を抑えることができ、骨折や神経麻痺を予防できることが明らかとなってきました。現在、骨転移に対する治療は、薬物治療と放射線治療が主体となります。骨折や神経麻痺が起きてしまった症例に対しては、手術治療を行うこともあります。骨転移の治療は、様々な診療科が協力して行っていく必要がありますが、東京医科歯科大学では、整形外科を中心とした集学的骨転移診療体制が整いつつあります。

①薬物治療

現在、「ランマーク」、「ゾメタ」という2つの薬剤が骨転移に対して保険適応となっています。両薬剤とも骨を壊す作用がある破骨細胞という細胞の活性を抑えることで、病変周囲の骨破壊を防ぎ、腫瘍細胞の骨への浸潤を抑えます。骨転移が発見された場合は、病変のサイズや自覚症状の有無にかかわらず、これらの薬剤の投与をできるだけ早くから開始することが推奨されています。副作用として、低カルシウム血症や腎機能障害を引き起こすことがありますので、投与中は定期的な血液検査が必要です。また、頻度は低いですが、顎骨の壊死が起こることがありますので、投与開始前の歯科受診をお願いしています。

②放射線治療

放射線治療は、病変の進行を抑えるだけでなく、痛みを緩和する効果もあります。痛みなどの自覚症状が出現している症例、骨の破壊が比較的急速に進行している症例、近いうちに骨折・神経麻痺を起こす可能性のある症例などが放射線治療の対象となります。

③手術治療

病変の進行により骨折・神経麻痺を起こしてしまった症例や骨折・神経麻痺を起こすリスクが高い症例などが外科的治療の対象となります。術後に放射線治療を追加することもあります。

整形外科腫瘍グループの骨転移に対する取り組み

①骨転移専門外来の開設

骨の病変は骨の専門家(=整形外科医)がマネージメントすべきという観点から、2011年に骨転移専門外来を開設いたしました。現在は、月曜日の午後と水曜日の午前に、院内の骨転移患者を中心に骨転移診療を行っています。早期から骨転移の治療を開始することで、疼痛や骨折、神経麻痺を予防し、患者さんの生活の質が維持できるよう、日々診療に励んでいます。

②院内診療連携の充実化

骨転移専門外来では、骨転移の診断や治療方針の決定などを行っていますが、実際に骨転移の治療を行う上で、様々な診療科との連携が必要不可欠です。東京医科歯科大学では、整形外科を中心とした集学的骨転移診療体制が整いつつあります。原発となるがんの治療を担当する各診療科のみならず、放射線治療科、放射線診断科、歯科、緩和ケアチームなどと連携をしながら骨転移の診療を進めています(図2)。

2図2 東京医科歯科大学における集学的骨転移診療体制

③骨転移キャンサーボードの開設

複数の診療科の医師や医療スタッフが一堂に会し、がん患者さんの病態や治療方針などを議論するためのカンファレンスのことを「キャンサーボード」といいます。東京医科歯科大学では、2016年4月より骨転移キャンサーボードを月に1回開催し、各診療科の先生のみならず、看護師や薬剤師などのコメディカルスタッフも交えて、治療が難しい骨転移患者の治療方針などについて、活発な討議を行っています(図3)。診療科の垣根を越えて意見を交換したり、情報を共有したりすることで、最良の骨転移治療を提供したいと考えています。

3図3 多職種の参加による骨転移キャンサーボード

(最終更新:2016-10-04)
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