テニス肘(上腕骨外側上顆炎)

病態

 テニス肘(上腕骨外側上顆炎)の病因は、古くより数多く唱えられています。伸筋(手首をそらす筋)の上腕骨外側上顆起始部の老化や、橈骨輪状靭帯の損傷や狭窄、または滑膜ヒダという関節内の滑膜肥厚など多岐にわたります。我々は、肉眼解剖学的研究により短橈側手根伸筋という伸筋腱の1つとその裏にある関節包という関節を包む膜構造の脆さがその病態に関わっていると報告しています(図1 Nimura, JHSAm 2014)。

図1 当科で解明したテニス肘に関わる解剖学的知見(Nimura, JHSAm 2014より改変)

症状

 手首や手指を伸ばしたとき、または前腕の回旋時に肘外側部の痛みを訴えることが多いです。なかには、握力の低下や手のひらを下に向けた状態で、肘を伸ばしたときに肘のひきつれ感が強く、伸ばしにくいという訴えもあります。

診断・検査

 圧痛(押して痛いところ)部位は、上腕骨外側上顆のみならず、前後の腕橈(上腕骨小頭と橈骨頭)関節上や伸筋に沿ってあります。手首や中指を抵抗下にそらすと痛い(Thomsen test, middle finger extension test)などの臨床所見が有名ですが、陰性のこともあります。経過の長い患者さんでは、前述の肘の伸ばしにくいという症状(Fringe impingement test)を訴えるのも大事な所見です。
MRI画像において、伸筋群やその深層の関節包が剥がれている所見が着目されることが多いですが、関節に挟まり込む滑膜の肥厚(滑膜ヒダ)も重要と考えています(図2)。
   

図2 MRIにおける滑膜ヒダの所見

当科の治療方針

 原則的には、生活動作指導とリハビリにより改善することが多いです。テニス肘の患者さんは、親指・人差し指・中指を中心に前腕回内位(手のひらを下に向ける)で物を持つ癖のあることが非常に多く、この動作自体がテニス肘に特徴的な肘外側部痛を誘発しています。そのため、
①薬指・小指のみで物を握れるようになる(尺側握り)
②手のひらを上に向けた位置(前腕回外位)で物を持つ
この2点を外来指導、リハビリにより獲得していただきます。これらの治療により、手首運動時の肘痛は改善することが多いですが、肘を伸ばすときのひきつれ感が改善しない場合は、肘関節鏡を用いた滑膜切除術を行っています(図3)。
            

図3 関節鏡における滑膜増生と器質化した滑膜ヒダ

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