寛骨臼形成不全

病態


変形性股関節症の章でも詳しく述べられておりましたが、我が国では寛骨臼形成不全が股関節症の主因とされていることから、寛骨臼形成不全が将来股関節症をきたしうる状態、すなわち前股関節症として股関節症の一部にも位置づけられているほどであり、この寛骨臼形成不全は女性に圧倒的に多いと言われています。
寛骨臼形成不全の程度は股関節症の進行度とも関係することがわかっており、寛骨臼形成不全が高度の場合には、それを早期に発見して評価を行い、適切に介入を行うことが股関節痛を回避し、ひいては長期の関節温存のために必要であることは疑う余地もありません。

関節唇損傷

寛骨臼形成不全においては骨による大腿骨頭の被覆不全(十分に覆えないこと)があり、大腿骨頭
を外上方向に亜脱臼させるような力が生じるため、これを抑えるために機能している関節唇(クッションのような組織)に過大な負荷がかかります。
これをそのまま放置しておくと、早期にこの関節唇が傷んでしまい、早期に変形性股関節症へと進行してしまいます。

寛骨臼形成不全による関節唇損傷のメカニズム

検査

単純X線(レントゲン)写真を撮って確定します。(詳しくは変形生関節症の章の【検査】の部で説明されています。)

治療

骨切り術
人工股関節全置換術の進歩により、若年の患者さんでも人工関節の適応が広がってきています。一方で、若年で関節症進行がない段階で日常生活に大きく影響する症例では骨切り術が選択されます。当科では関節症変化がない寛骨臼形成不全に対して、寛骨臼回転骨切り術(Rotational acetabular osteotomy; RAO)等の骨盤骨切り術を行っております。

大腿骨頭の被覆が術前よりも著明に改善しており、術後5年が経過しても関節の隙間の減少は認めません。

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