整形外科学 教授 大川 淳
高まるニーズにトップレベルの診療・研究で応える
整形外科は、骨・軟骨、関節、腱、靭帯、筋などの骨格系や脊髄、末梢神経などの神経系の診療を扱い、これらの外傷、変性、腫瘍、骨系統疾患など多彩な傷病を治療対象としているのはご存じのとおりです。生命科学や生命に直結する医療の進歩がもたらした超高齢社会のこれからの課題は「健康寿命の延伸」です。自分の足で移動し、自分のことを自分でできる能力をできる限り長く維持するには、寿命近くまで身体が思い通りに機能しなければなりません。この点で整形外科は加齢による身体機能の低下を治療する診療科として、たいへん重要な役割を持つようになりました。もちろん並行して骨折や脱臼などの外傷の治療や、スポーツ選手に対する特殊なケアも整形外科として大きな仕事です。こうしたことから、医療の中での整形外科の重要性がどんどん高まっており、多くの病院で整形外科医のニーズが急増しているのが現状です。
東京医科歯科大学整形外科の特徴は、整形外科が扱う領域すべてにわたってトップレベルの診療と研究を行っていることです。脊椎領域では靭帯骨化症の厚労省難病臨床研究班の班長を務め、全国的な臨床研究の中心を担ってきました。また、膝関節では世界に先駆けて滑膜由来間葉系幹細胞の移植治療を開始し、軟骨欠損や損傷半月板の治療体系に変革をもたらしました。それ以外にも、膝靭帯損傷を含む下肢外傷や肩腱板断裂ではプロ選手やオリンピック選手をはじめとするトップアスリートの治療を行っており、骨盤外傷を含む重度外傷、転移がんを含む骨軟部腫瘍などでも数多くの診療実績を誇っています。
研究としては、非侵襲的に脊髄機能を評価する脊磁計の開発や柔らかい人工骨の開発、新規人工膝関節の開発など臨床に直結するものから、骨・軟骨再生や疼痛の制御などに関する基礎的研究で数多くの成果を上げています。大学院は先端医療開発学講座に属する整形外科学分野(大川)と、生体支持組織学講座に属する運動器外科学分野(古賀准教授)から構成され、臨床診療と教育では2つの大学院分野が協同して診療上の“整形外科”を担当します。2つの分野を合わせたスタッフと大学院生の数は50名をはるかに超えており、大学内では最も大きな診療・研究グループを形成しています。国内外への留学も積極的に推進しており、常時10名近くが米国や欧州に研究留学、国内の専門病院に臨床留学しています。国外からの留学生・研究生も多く、10名近くが研究生、大学院生として所属しています。
東京医科歯科大学整形外科は1944年に開設され、すでに70年を超える歴史をもっています。臨床、研究、教育の各方面において、これまで我が国のトップレベルの実績を上げてきていますが、これからも難病の克服や整形外科医療の進歩に役立てるよう、教室員一同、より一層の努力をもって邁進する所存です。