腫瘍には、癌のように上皮性の組織から発生する腫瘍と、骨、筋肉、脂肪、神経などの非上皮性の組織から発生する腫瘍に分かれます。整形外科で扱う腫瘍は後者の非上皮性組織から発生する腫瘍で、このような腫瘍のことを骨軟部腫瘍といいます。また、骨は癌が転移しやすい臓器の一つで、骨に転移した腫瘍のことを転移性骨腫瘍(癌の骨転移)といいます。近年、当院整形外科では、転移性骨腫瘍専門外来(骨転移外来)を開設し、骨転移の診療にも力を入れています。
担当医師・外来表
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
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午前 | <骨転移> 佐藤 信吾 <骨軟部腫瘍> 小柳 広高 |
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午後 | <骨転移> 小柳 広高 (1.3.5週) <脊椎転移> 平井 高志(2週) 湯浅 将人(4週) |
<骨転移> 佐藤 信吾 <骨軟部腫瘍> 小柳 広高 |
大学病院
助教 船内 雄生
Yuki Funauchi
がん治療認定医
大学病院 がん先端治療部・緩和ケア科・整形外科
緩和ケアセンター センター長
緩和ケア科 診療科長
骨転移診療ユニット長
講師 佐藤 信吾
Shingo Sato
がん治療認定医
手術実績
平成28年度
東京医科歯科大学 | がん研究会有明病院 | 埼玉県立がんセンター | |
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良性骨腫瘍 | 23 | 120 | 44 |
良性軟部腫瘍 | 31 | 258 | 140 |
悪性骨腫瘍 | 1 | 48 | 15 |
悪性軟部腫瘍 | 6 | 142 | 47 |
転移性腫瘍 | 5 | 70 | 29 |
合 計 | 66 | 638 | 275 |
平成29年度
東京医科歯科大学 | がん研究会有明病院 | 埼玉県立がんセンター | |
---|---|---|---|
良性骨腫瘍 | 15 | 132 | 50 |
良性軟部腫瘍 | 57 | 235 | 105 |
悪性骨腫瘍 | 8 | 48 | 24 |
悪性軟部腫瘍 | 18 | 152 | 59 |
転移性腫瘍 | 27 | 44 | 7 |
その他 | 2 | 21 | 4 |
合 計 | 127 | 632 | 249 |
平成30年度
東京医科歯科大学 | がん研究会有明病院 | 埼玉県立がんセンター | |
---|---|---|---|
良性骨腫瘍 | 14 | 93 | 166 |
良性軟部腫瘍 | 59 | 316 | 上記数値に含む |
悪性骨腫瘍 | 8 | 41 | 86 |
悪性軟部腫瘍 | 13 | 120 | 上記数値に含む |
転移性腫瘍 | 16 | 19 | 27 |
その他 | 8 | 36 | 13 |
合 計 | 118 | 625 | 292 |
平成31年度
東京医科歯科大学 | がん研究会有明病院 | 埼玉県立がんセンター | |
---|---|---|---|
良性骨腫瘍 | 12 | 95 | 63 |
良性軟部腫瘍 | 67 | 277 | 150 |
悪性骨腫瘍 | 1 | 44 | 21 |
悪性軟部腫瘍 | 14 | 116 | 55 |
転移性腫瘍 | 21 | 78 | 33 |
その他 | 4 | 61 | – |
合 計 | 119 | 671 | 322 |
腫瘍専門医が在籍する関連病院
- がん研究会有明病院
- 埼玉県立がんセンター
1.骨軟部腫瘍専門外来:毎週水曜日
骨軟部腫瘍専門外来では、四肢・体幹部の腫瘤に対して、診断に必要な画像検査や病理検査を行い、腫瘍性疾患の有無を判別します。骨軟部腫瘍は種類が多い上、全国的に症例数が少ないものが多く、診断に難渋することも少なくありません。当科では、骨軟部腫瘍を専門とする関東の整形外科医、画像診断医、病理医と定期的に症例検討を行うシステムを備えており、正確かつ迅速な診断を目指しています。手術が必要な症例に対しては、最小限の手術侵襲で、再発のない安全な手術を目指しています。腫瘍の大きさ、部位、種類によっては日帰り手術も可能です。また、当科では骨軟部腫瘍の治療を、関連施設であるがん研究会有明病院(東京都江東区)および埼玉県立がんセンター(埼玉県北足立郡伊奈町)と協力して行っており、症例によってはこれらの病院で治療を受けていただくことがあります。
2.転移性骨腫瘍専門外来(骨転移外来):毎週月曜日午後、毎週水曜日
骨は癌が転移しやすい臓器の1つです。癌が骨に転移すると、痛みが出たり、骨折を起こしやすくなります。また、脊椎(背骨)に転移すると時には脊髄神経を圧迫し、四肢の麻痺につながることがあります。このような骨折や麻痺は、患者さんのQOL(Quality of Life:生活の質)を著しく低下させてしまうため、骨転移による症状の発現や進行をいかに抑え、患者さんのQOLを維持するかが重要な課題となっています。近年の高齢化社会に伴い、骨への転移を有する患者さんが急増している背景から、当科では転移性骨腫瘍専門外来(骨転移外来)を開設し、骨転移の診療にも力を入れています。癌は早期発見・早期治療が大切であるように、骨転移も早期発見・早期治療が大切です。癌が見つかった患者さんには、早めにPET検査や骨シンチグラフィー検査などを行い、骨への転移がないかどうかを精査します。骨への転移が見つかった場合は、すみやかに薬物治療や放射線照射などの治療を開始します。
骨転移の治療は様々な診療科と協力して行っていく必要があることから、現在、集学的な院内骨転移診療体制を整備中です。原発癌の治療を担当する診療科のみならず、放射線治療科、歯科、緩和ケアチームなどと連携しながら治療を行っています。
研究内容
1.骨軟部腫瘍の起源細胞の探索
骨軟部腫瘍は種類が多い上、発生の機序が複雑で、どの細胞から発生しているのかも未だ不明な腫瘍が少なくありません。私たちは、血管系の細胞が一部の骨軟部腫瘍の起源細胞であることを世界で初めて見出し、骨肉腫や未分化多型肉腫を発症するマウスモデルの開発にも成功しました。現在は、これらのマウスモデルを用いて、骨軟部腫瘍の発生機序の更なる解明および新しい治療薬の開発を目指しています。
2.骨転移病変における癌細胞の骨組織との相互作用の解明
癌が骨に転移する分子メカニズムが少しずつ明らかとなってきていますが、骨組織に転移した癌細胞が、原発の組織とは異なる環境でどのように増殖していくのかについては未だよくわかっていません。私たちは、骨転移部位における癌細胞と骨組織の細胞(骨芽細胞や破骨細胞)との相互作用に注目し、骨組織内における癌の進展機序の解明に取り組んでいます。癌の骨転移の分子機構の更なる解明は、骨転移を有する患者さんのQOLの向上や新しい骨転移治療薬の開発につながることが期待されます。