東京医科歯科大学 整形外科

東京医科歯科大学整形外科7

変形性股関節症

病態


股関節は脚の付け根にあり、体の中で一番大きな球関節です。太ももの骨の一番先端にある骨頭が骨盤の寛骨臼と呼ばれるくぼみにはまり込むようになって関節を作っています。歩行時には体重の3倍の力を支えており、周囲の筋肉によって色々な方向に動きます。健康な股関節ではこの骨頭、寛骨臼の表面は厚さ2-4mm程度の軟骨で覆われています。様々な原因でこの軟骨が摩耗した股関節は変形性股関節症と呼ばれます。本邦では寛骨臼による覆いが不十分なことが原因となって発症する二次性変形性股関節症がほとんどです。

症状

股関節症の主な症状は、関節痛と機能障害です。関節痛として立ち上がりや歩き始めに脚の付け根に痛みを感じます。主な機能障害として可動域制限があります。可動域制限が進むと脚を持ち上げたり広げたりするのが困難になってきます。そのため日常生活では足の爪切りがやりにくくなったり、靴下が履きにくくなったり、和式トイレ使用や正座が困難になったりします。

検査

上記の症状があった場合単純X線(レントゲン)写真を撮って確定します。寛骨臼による覆いの指標としてCE角といった角度が用いられることが多いですが、これは大腿骨頭の中心を通る垂線と大腿骨頭の中心と寛骨臼の縁を結んだ線との間の角度のことです。これは正常では30度前後ですが、寛骨臼による覆いが不十分である場合、20度以下を寛骨臼形成不全と診断しています。関節症の病期を簡単に説明しますと、発症当初の、関節の変形が生じる前(前股関節症)においては、寛骨臼の形成が悪い(CE角が小さい;図参照)だけで軟骨の変性はありません。関節症が進んでくると、軟骨のすり減りにより関節の隙間が狭くなり、体重がかかっている部分の骨が変性して硬くなります(X線では白くなってきます)。さらに関節の隙間が狭くなって進行期関節症、末期関節症となると、関節の中や周囲に骨棘とよばれる異常な骨組織が形成されたり、骨嚢胞と呼ばれる骨の空洞ができたりします。必要に応じて局所麻酔薬を股関節内に注入する股関節ブロックやCTとMRIなどの追加検査を行うことがあります。

治療

人工股関節全置換術
変性した軟骨や骨を取り除き、金属やセラミック、ポリエチレンで作られた人工的な関節と置き換える人工股関節全置換術を当科では数多く行っております。この手術により、股関節の痛みはほとんど消失し、可動域も改善します。人工股関節全置換術はインプラントをセメントで固定する方法とセメントを用いず固定する方法(セメントレス)があります。当科では患者さんの骨の形状によってセメントとセメントレスの使い分けを行うことで、術後合併症の予防に努めています。また、麻酔科と連携をとることで、両側の人工股関節全置換術を基本的に一期的に行っております。また、脚短縮が著明な症例では、脚延長による神経麻痺のおそれがあります。当科では術中神経モニタリングを行うことで、術中の神経麻痺を予防する試みをおこなっています。インプラントの設置に関しては、最新の非侵襲ポータブルナビゲーションを用いて、正確な設置を目指しています。

骨切り術
人工股関節全置換術の進歩により、若年の患者さんでも人工関節の適応が広がってきています。一方で、若年で関節症進行がない段階で日常生活に大きく影響する症例では骨切り術が選択されます。当科では関節症変化がない寛骨臼形成不全に対して、寛骨臼回転骨切り術(Rotational acetabular osteotomy; RAO)等の骨盤骨切り術を行っております。

末期変形性股関節症 術前画像
両側一期的人工股関節全置換術後
スマートフォンを用いた最新の非侵襲ナビゲーションシステム
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