変形性股関節症や寛骨臼(臼蓋)形成不全症、大腿骨頭壊死症などの成人疾患から、発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)やペルテス病、大腿骨頭すべり症といった小児疾患まで、あらゆる年代の股関節疾患を対象としています。手術療法は各種骨切り術や人工股関節全置換術が特に多く、低侵襲術式を原則とするとともに、両側手術適応例には両側同時置換術も行い、早期社会復帰を図っています。
高度骨欠損を伴う人工股関節弛みに対しての院内骨銀行を利用した再置換術や、高度脚延長を要する脱臼性股関節症等における術中神経電位測定下の人工股関節全置換術、高度変形例に対する実物大臓器立体骨モデルによる手術支援(一部先進医療による)を用いた股関節手術やナビゲーションを用いた人工股関節全置換術など、難度の高い手術も正確性・安全性を重視して行っています。また、分子生物学や薬理学、生体力学の最先端の知見を、保存療法による手術回避や、手術療法の成績向上に応用すべく基礎研究や臨床研究を行っています。
担当医師・外来表
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
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午前 | 麻生 義則 渡部 直人 宮武 和正 高田 亮平 山内 裕樹(隔月1週) 古賀 大介(2.4週) 平尾 昌之(3週) |
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午後 | 渡部 直人 宮武 和正 高田 亮平 山内 裕樹(隔月1週) 古賀 大介(2.4週) 平尾 昌之(3週) |
大学院 運動器外科学
講師 宮武 和正
Kazumasa Miyatake
軟骨再生学講座
講師 高田 亮平
Ryohei Takada
大学病院
特任助教 天野 祐輔
Amano Yusuke
非常勤講師(股関節グループ)
平尾 昌之
Masanobu Hirao
先端治療開発学 骨代謝(整形外科学) グループリーダー
整形外科先端治療開発学 准教授
ジョイントリサーチ講座
分子生命医学講座
教授 麻生 義則
Yoshinori Asou
非常勤
非常勤講師 神野 哲也
Tetsuya Jinno
非常勤講師 古賀 大介
Daisuke Koga
非常勤講師 山内 裕樹
Yuki Yamauchi
手術実績
2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | |
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片側人工股関節全置換術 | 139関節 | 140関節 | 124関節 | 130関節 | 76関節 |
両側一期的人工股関節全置換術 | 28例 56関節 |
25例 50関節 |
16例 32関節 |
16例 32関節 |
11例 22関節 |
人工股関節再置換術 | 6関節 | 6関節 | 10関節 | 12関節 | 10関節 |
骨切術 | 12関節 | 7関節 | 1関節 | 2関節 | 1関節 |
その他 | 18関節 | 8関節 | 20関節 | 25関節 | 11関節 |
股関節専門医が在籍する関連病院
- 日産厚生会玉川病院股関節センター
- さいたま赤十字病院
- JAとりで総合医療センター
- 同愛記念病院 人工関節センター
- 埼玉石心会病院
- 草加市立病院
- 中野総合病院
- 獨協医科大学埼玉医療センター
診療内容
股関節グループは、毎週木曜日の午後に専門外来を開設しており、新生児から高齢者にわたる股関節疾患に対し診療を行っています。
特に変形性股関節症や大腿骨頭壊死症に対する人工股関節全置換術による治療を主として、股関節疾患を有する患者さんの日常生活の改善に努めています。
また、きめ細かな臨床上のフォローアップを行い、異常の早期発見に努めています。
1.最先端医療
変形性股関節症や大腿骨頭壊死症に対する治療方法は日々進歩しており、正確な病態把握の元に的確な時期に的確な手術が行われることが望まれます。
当科は変形性股関節症の診療ガイドライン策定委員会や、国の特定疾患である特発性大腿骨頭壊死症の研究班等、国内の股関節疾患に関する指導的役割を担う組織に参加しており、常に股関節最先端医療の研究、施行を目指しています。
また当科ではCT、MRI、関節造影などを含めた様々な診断方法を総合して可能な限り関節温存手術を行う、国内でも数少ない施設であるばかりでなく、人工股関節全置換術においても関東の大学病院の中では症例数、手術成績ともトップクラスにあり高い評価を受けています。
さらに、前・初期股関節症に対しては、独自に開発した寛骨臼回転骨切り術やキアリ骨盤骨切り術、大腿骨骨切り術等、患者さん個々の病態に応じて的確な手術方法を選択し、成績向上をめざしております。
2.最小侵襲手術(Minimally Invasive Surgery : MIS)
当科では以前より術中の侵襲を少なくし、早期リハビリを行うことに力を入れていましたが、さらなるリハビリの短縮を目指し、通常の症例には原則として筋腱非切離で行う最小侵襲手術(MIS THA)による人工股関節全置換術を施行しています(皮膚切開は10cm程度です)。症例に応じて前方・前側方・後側方進入法を適用しており、2週間程度の短期間入院での自宅退院が可能となっています。
3.両側一期的施行人工股関節全置換術
変形性股関節症の患者さんには両側罹患例が少なくありません。このような両側罹患例の患者さんに片側人工股関節全置換術を施行した後に待機的にもう片方の人工股関節全置換術を行う場合には片側の人工股関節全置換術を行って痛みが取れても未施術側の痛みがあるために手術後の満足度があまり得られませんでした。また入院期間も両側を合わせると片側施行例の2倍の日数を要しました。そこで当科では2001年から両側の一期的人工股関節全置換術を施行開始し、リハビリ期間や入院期間の短縮などを達成し、良好な成績を報告しています。
4.術後感染の予防
人工股関節全置換術における、術後感染の予防にも細心の注意を払っております。下の写真のように専用のクリーンルームで、専用の防御服を着用の上で手術を行います。
臨床研究
1.各種股関節症における手術前・後の筋力・動作解析
各種股関節症の動作特異性に関し、動作解析装置、歩行分析装置等を用い、疾患による動作特異性を検討しています。さらに、股関節手術後の日常生活動作改善の評価を明確にするため、リハビリテーション部と提携しながら股関節手術前後の筋力、日常動作レベルの評価を行なっています。
2.より安全な手術を目指して。(肺塞栓について)
術後深部静脈血栓症・肺塞栓症は、全身状態を悪化させる可能性のある重大な合併症の一つです。当科では、これらの疾患について治療法、予防法について研究し、その予防・治療に努めております。股関節手術がすべての患者さんに安全に行われるよう、更なる安全な手術法の開発とともに今後とも各科と協同して研究を進めていきます。
3.脚長補正
変形性股関節症の手術における脚長差の補正は、術後生活動作という点から、大変重要な手術の要素であると考えられます。一方で特に3cm以上の脚延長を要する場合、時として下肢の神経麻痺を生じることも報告されています。当科では世界的レベルにある脊椎グループの協力をえて脊髄誘発電位術中モニタリングを施行しており、脚延長に伴う術後の麻痺予防に努めております。これにより過去最大5.5cmの脚延長を一期的手術で安全に行い得ました。