未分化多形肉腫(Undifferentiated Pleomorphic Sarcoma/UPS)

病態

未分化多形肉腫 (UPS) は、起源不明の悪性軟部腫瘍であり、全悪性軟部腫瘍の約20%を占めます。以前は、悪性線維性組織球腫(malignant fibrous histiocytoma : MFH)と呼ばれ、病理組織学的所見から5型に分類されていましたが、その後、病理組織学的にMFHが組織球由来でないことが判明し名称が変更されました。そして現在、UPSは、「遺伝学的、病理組織学的手法によって特定の遺伝学的特性や分化傾向を証明できない多くの分類不能な悪性軟部腫瘍」を総称したものとなっています。
・発生年齢:50-70歳の中高年が多いが若年者での発生もあります
・発生部位:すべての部位で発生します。報告例では大腿部をはじめとした四肢や体幹が多いですが、内臓発生の報告もあります。
・放射線を照射した部位に後に発生することもあり
ます。放射線誘発性肉腫の25%以上はUPSと言われます。
・増殖スピードが速く、周囲への浸潤をしばしば伴います。また遠隔転移を伴うこともあります。
※前述の通り、本腫瘍は完全には理解されていません。しかしながら、遺伝子異常、化学放射線療法による刺激、慢性的な炎症、リンパ浮腫など、いくつかの素因が UPS の発生に関与しているのではないかといわれています。

症状

UPSは通常、無症候性です。そのため、急速に成長する皮膚または皮下結節を主訴に病院を受診することが多いです。一方、体表ではない体内発生のUPSでは、全身症状を呈することがあり、整形外科以外の外来を受診され、診断に至ることがあります。

検査

・問診:年齢や発生した時期、場所をよく問診します。
・血液検査
・画像検査:レントゲン、CT、MRI、PET、などの画像検査を行います。
どれも診断の助けにはなるものの、最終診断には至りません。
・生検(切除生検および針生検):腫瘍組織を採取して、病理医が診断します。
※当院では、肉腫が疑われた場合は緊急性が高いと判断し、1日でも早く治療を開始すべく画像検査や生検を早急に進めていく方針をとっています。

治療

・手術治療
基本的に外科的な切除を行います。その際、周囲組織への浸潤も考えられるため、周りの組織も一緒に付けて切除する「広範切除」を行うのが一般的です。
・放射線治療
腹腔内や縦郭内など外科的に十分な切除を得ることが難しい方や、腫瘍周囲に神経血管など重要な組織があり十分な切除が確保できなかった場合には、再発予防目的に術後放射線照射を行うことがあります。
・化学療法
遠隔転移をきたしている方や高悪性度の肉腫に対しては、化学療法を行うことがあります。

周囲へ浸潤し、神経・血管を取り囲んでいる

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