病態
骨肉腫は腫瘍細胞が骨を産生する、多くは髄内発生の高悪性肉腫です。骨肉腫は造血器腫瘍を除いた原発性骨悪性腫瘍の中で最も頻度の高いものですが、日本全国で1年間に200人前後しか新規に発症しない非常にまれな悪性腫瘍(希少がん)です。現在、世界保健機関(WHO)の組織型分類により3種類の組織亜型(通常型骨肉腫、血管拡張型骨肉腫、小細胞型骨肉腫)に分類されます。骨肉腫は全身のどの骨からも発生しますが、6割程度が膝周囲(大腿骨遠位または脛骨近位)の骨幹端部に発生します。発症年齢は10代とくに15歳前後に非常に多く、続いて40-50歳代で小さなピークを見せる、2峰性の分布をとります。
症状
週単位から月単位での痛みで自覚されることが多く、痛みは出たり消えたりすることがありますが、完全に解消されることはないのが一般的です。 小児では、運動や急速な骨の成長が原因で痛みが生じる可能性もあるため、診断が遅れる可能性があります。身体診察では増大傾向のある腫瘤を触れ、時に罹患関節の可動域制限を伴い、腫瘍上部の皮膚は熱感や発赤を伴う事があります。病的骨折も10-15%の方で起こしてしまいます。
検査
・問診
・血液検査
・画像検査:レントゲン、CT、MRI、PETなどを行います。
・生検(針生検/切開生検):腫瘍組織を採取し、病変を病理医が顕微鏡で見ることで良悪性の診断をします。
※当院では、肉腫が疑われた場合は緊急性が高いと判断し、1日でも早く治療を開始すべく画像検査や生検を早急に進めていく方針をとっています。
治療
骨肉腫は化学療法に対する感受性が比較的高いとされている腫瘍です。そのため骨肉腫に対する標準治療は通常、術前化学療法・外科的切除・術後化学療法の3段階で構成されます。
診断後まず10週前後に及ぶ術前化学療法を受けます。この術前化学療法は全生存率を高めることが示されており、術前化学療法に対する腫瘍の反応が高いほど、生命予後は良好です。この最初の化学療法に続いて、手術を行います。四肢の切断術は、かつては一般的でしたが、現在では患者の 90% が四肢温存手術(腫瘍広範切除術)を受けています。術後さらに 16 -26週程度の化学療法を行います。放射線治療に対する感受性は高くなく、通常は切除不能例などに対する局所の補助的な用途にのみ用いられます。