東京医科歯科大学 整形外科

東京医科歯科大学整形外科7

脂肪肉腫

病態

脂肪肉腫は悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)の一種であり、全亜型を合わせると軟部肉腫の40%程度を占める最も多い腫瘍です。一般的には脂肪細胞に似た腫瘍細胞が増殖して発生しますが、組織形態はさまざまであり、現在、世界保健機関(WHO)の組織型分類で5種類の組織亜型に分類されます。型によって予後が大きく異なります。
【全亜型に共通する症状】
脂肪肉腫は、すべての型において自覚症状が乏しいといった特徴があります。そのため、画像検査で偶発的に発見されケースや、無痛性の腫瘤を主訴に病院を受診されることが多いです。特に後腹膜発生例では、自覚症状があらわれにくく、巨大になるまで気づかれにくいことが多いです。

検査

・問診
・血液検査
・画像検査:レントゲン、CT、MRI、PETなどの画像検査を行います。
どれも診断の助けにはなるものの、最終診断には至りません。
・生検(針/切開/切除生検):
腫瘍組織を採取し病理医が顕微鏡で診ることで良悪性やどんな病気なのかを診断します。
※当院では、肉腫が疑われた場合は緊急性が高いと判断し、1日でも早く治療を開始すべく画像検査や生検を早急に進めていく方針をとっています。

治療

・手術治療
基本的に切除可能な方には外科的切除が治療の根幹となります。その際、周囲組織への浸潤も考えられるため、周りの組織も一緒に付けて切除する「広範切除」を行うのが一般的です。
・放射線治療
腹腔内や縦郭内など外科的に十分な切除を得ることが難しいケースや、腫瘍周囲に神経血管など重要な組織があり十分な切除が確保できない/できなかった場合には、再発予防目的に術前/術後放射線治療を行うことがあります。
・化学療法
遠隔転移をきたしている症例や高悪性度の脂肪肉腫に対しては、亜型に応じて化学療法を検討します。

亜型ごとの各論

1:Well-differentiated Liposarcoma(分化型脂肪肉腫)/Atypical Lipomatous tumor(異型脂肪腫瘍腫瘍)
 ・全脂肪肉腫の40-45%を占め最も多くみられる低悪性度の腫瘍です。
 ・発生年齢と性差:40-50歳台での発症が最多であり、性差はないとされます。
 ・発生部位:四肢、特に大腿深部に最も多く、次いで後腹膜での発生が多いとされます。部位により予後が異なることから、病態に即し後腹膜発生例でWell-differentiated Liposarcoma、四肢例でAtypical lipomatous tumorの病名が使われることが多いです。
 ・四肢例では転移のリスクは低く、予後は良好です。治療はR0切除を目指した広範切除が原則で、化学療法や放射線治療は通常行いません。
2:Dedifferentiated liposarcoma(脱分化型脂肪肉腫)
 ・約10%は、前述の分化型脂肪肉腫が脱分化をきたしたものであり、後腹膜からの脱分化例が多いと考えられています。
 ・発生年齢/性差:分化型脂肪肉腫と変わりないと言われます。
 ・発生部位:四肢と後腹膜に多いが、その中でも後腹膜発生が圧倒的に多いとされています。
・治療はやはり広範切除が絶対的な治療のメインであり、高リスクの方には化学療法や局所放射線治療を組み合わせます。不完全な手術では効率に再発を認める上、遠隔転移のリスクもあります。特に後腹膜発生では解剖学上不完全な手術が余儀なくされることもあり、予後が悪いとされています。

3:Myxoid liposarcoma(粘液型脂肪肉腫)
 ・全脂肪肉腫の約30%を占め、円形から卵形の間葉系細胞と脂肪芽細胞が粘液状の基質の中に増殖した脂肪肉腫であり、腫瘍内部は粘性に富んだ腫瘍です。
・発生年齢と性差:生産労働年
齢と言われる30-40歳台でしばしば認められ、20歳以下に発生することもあります。性差はあまりないとされます。
・発生部位:四肢、特に大腿の深部に多く発生します。
・治療は広範切除が治療の根幹で、正しい手術を行えば局所再発を認めることはほとんどありません。しかし、悪性度の高い本腫瘍型では遅発性の遠隔転移を来すことがまれではありません。またその転移は他の肉腫と相違し、肺以外の部位に突然転移することが多く、しばしばADL低下に直結します。これらの知見から高リスクの方には化学療法を選択し、慎重な経過観察を行います。

4:Pleomorphic liposarcoma(多形型脂肪肉腫)
 ・全脂肪肉腫の約5%であり、脂肪芽細胞の多形性を呈する高悪性度の腫瘍です。
・発生年齢と性差:50歳以上に発生し、性差はほとんどないとされます。
・発生部位:多くは四肢深部に発生し、体幹壁、後腹膜などにも発生します。
・発育が早く、3-6か月の経過で大きく成長します。
・高悪性度の腫瘍では転移率も30-40%と高く、予後不良と考えられています。やはり治療の根幹は広範切除であり、高リスクの方には化学療法を組み合わせて治療を行う必要があります。
5:Myxoid pleomorphic liposarcoma(粘液多形型脂肪肉腫)
・全脂肪肉腫の中でも発生頻度は非常に少ない、比較的新しい概念の腫瘍です。粘液型脂肪肉腫と多形型脂肪肉腫の組織像が重なり合って観察されるものの、前述の脂肪肉腫の遺伝子融合等がみとめられない腫瘍とされています。
・発生年齢と性差:小児や若年者に発生し、30歳以下での報告が多いです。女性に多く発生すると考えられています。
・発生部位:縦郭発生の報告が多いが、大腿、腹部、臀部などもの報告もあり、発生部位はさまざまです。
・悪性度が非常に高く、転移・再発率が高いため予後不良とされています。

2022年08月23日
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