特発性大腿骨頭壊死症

病態・疫学

大腿骨頭壊死症は大腿骨頭の虚血によって骨壊死が起こり、荷重に伴い骨頭が変形し、股関節の機能が失われる難治性疾患です。外傷性 (股関節脱臼や大腿骨頸部骨折)、潜函病、放射線照射など原因の明らかなものは二次性大腿骨頭壊死症と分類されます。一方で、そのような原因がなく発生するものは特発性大腿骨頭壊死症と分類されています。特発性大腿骨頭壊死症はステロイドの全身投与歴や習慣性飲酒、喫煙に関連するといわれていますが、その発生機序はいまだ解明されておらず、本邦の指定難病に指定されています。日本における大特発性腿骨頭壊死の1年間の新規発生数は2000〜3000人で、好発年齢は全体で30〜50歳代、ステロイドに限れば30歳代で働き盛りの年代に多いといわれています。

検査

単純X線像 (レントゲン)検査やMRI検査を行い、後述する診断基準をもとに診断をします。単純X線検査では、大腿骨頭内に帯状硬化像が観察され、大腿骨頭の圧潰が生じると関節面の不整や大腿骨頭軟骨下骨折線 (crescent sign)を認めるようになります (図1)。初期の段階では単純X線では変化がみられないこともあるため、MRI検査は早期診断に欠かせない診断法です。MRIでは大腿骨内に帯状信号域を示す、いわゆるバンド像が認められます (図2)。また、診断のためにテクネチウムシンチグラフィー(骨シンチ)検査を実施する場合もあります (図3)。これらの検査を行い、総合的に大腿骨頭壊死の診断をします。術前評価のためにCT検査を行い、壊死領域の範囲や圧潰進行の判定をすることもあります。

図1 大腿骨頭壊死と正常股関節の単純X線像


図2 大腿骨頭壊死のMRI画像

図3 テクネチウムシンチグラフィー

症状

大腿骨頭壊死が発生してMRIで異常像が確認されただけの時期や、単純X線像で帯状硬化像があるものの骨頭圧潰はない時期には通常疼痛はないことが多いです。骨頭の圧潰が生じると初期には荷重時痛がみられ、進行すると股関節の運動に伴い運動時痛が増強します。疼痛の割に股関節可動域制限が少ないことも特徴の1つです。

治療

保存治療として鎮痛薬による疼痛緩和療法が可能です。その他、体重コントロールや長距離歩行の制限、重量物の運搬禁止などの生活指導を行います。(これは股関節学からの引用です。書かなくてもいいかとも思います。骨頭が圧潰し、疼痛によって日常生活に支障をきたすようであれば手術治療も考慮され、大腿骨骨切り術や人工股関節全置換術が該当します (図4)。大腿骨骨切り術は骨頭圧潰が進行せずに関節温存が期待できる反面、数ヶ月単位の荷重制限を要したり、社会復帰に遅れが生じたりする可能性があります。人工股関節全置換術(図4)は耐久性や脱臼リスクなどの合併症の可能性はありますが、術後から荷重可であり社会復帰が早いというメリットがあります。術式については壊死領域や圧潰の程度、患者さん自身の社会状況によって決定されます。

図4 人工股関節全置換術後の単純X線像

ページトップへ戻る