第54回日本人工関節学会学術集会 参加報告

54回日本人工関節学会学術集会参加報告

川口工業総合病院 堀内聖剛

2024223,24日に開催された第54回日本人工関節学会に参加しましたので、ご報告させていただきます。

本学会は、人工関節研究会として1971年に設立され、1996年に日本人工関節学会に発展し、現在では正会員数が4,000名を超える大きな学会です。今回3000名近くの方が参加したとのことで大変注目される学会であることが窺えます。京都大学の松田秀一教授を会長として京都の国立京都国際会館で開催されました。

今回の学会テーマは「極(人工関節手術の極意/究極のテクノロジー探求/質を極めた臨床研究)」で、研究の活性化・若手整形外科医の教育と啓発・国際化の推進につながるような学術集会として、手術手技のビデオセッション、最先端技術に関するシンポジウムなどを数多く企画が開催されておりました。また、今回新たな試みとして、ポスター発表者も口演を聴講できるようにと座長を伴ったポスター発表はなく、ポスター展示のみでした。

 

ここから私が聴講して、印象に残った講演の一部を紹介させていただきます。まずTHAの皮切についてです。Bikini皮切やTransverse incisionと呼称するそうですが、えっ?と思ったのは私だけでしょうか。名前もインパクトがあり早速聴講しました。前方アプローチの際に置く皮切は筋肉の走行に沿った縦皮切が一般的かと思いますが、そうではなく直交する横皮切で始めるというものです(皮下の展開は通常通り)。そうすることで真皮への張力を減らし、肥厚性瘢痕になりづらく、審美性が高い創部になるとのことです。皮切の位置まで言及されているTHA手術の完成度の高さには年々驚かされます。

 

次に手術支援NavigationRobot関連についてです。今回演題タイトルだけで200近く発表がされておりました。特に2日目のランチョンセミナーは9つの会場のうち5つで取り上げられている程活発なものでした。そのうちの1つの会場で聴講した際、オーディエンスの半分以上が膝Robotを使用しているという驚異的な結果でした。また今回新規に4K Surgical Theaterという展示会場内に特別スクリーンが設置され、手術動画を高解像度のモニターで映写し、見ることができました。従来の手術動画より鮮明で、わかりやすいと感じました。ここでもRobot (MAKO)を使用したTKA手術が紹介されており、誰がやっても同じ骨切りが可能で、boundaryを超えないということが印象的でした。骨切りが正確にできればgap/balanceをより合わせやすいのは間違いなく、展開が難しい症例でもboundaryを超えなければ血管損傷を含めた様々なリスクも回避できると考えます。Patella操作についてはまだ未解決ですが、需要の多さがその活躍ぶりを物語っています。日本ではまだ数社ですが、中国では20社以上とも言われ、既にレッドオーシャンであります。今後ますます手術支援NavigationRobotに関する発表が多くなることが予想されます。術者がRobotに使われるではなく、術者がRobotを使いこなし、的確な選択を行い、会得できることが理想的と感じました。

さて、本学会でも医科歯科大学及び関連病院の先生方が多くの座長や発表をされご活躍されておりましたので一部になりますが共有させていただきます(会場で写真を撮れなかった先生方誠に申し訳ございません)。当院からは荻内先生が人工足関節置換術のセッションで座長を、獨協医科大学埼玉医療センターの神野先生はTHAの英語セッションの座長をされておりました。また大学からは宮武先生が人工股関節全置換術術前の関節内ブロックと術後遺残性疼痛の関連性の検討、中川裕介先生が人工膝関節周囲感染におけるエコーガイド下滑膜生検の有用性、高田亮平先生がピンレス人工股関節ポータブルナビゲーションの発表をされ、ご活躍されておりました。そして今回「関節女子を増やそう!」という特別企画が開催されました。これは女性医師の働き方や女性目線を中心とした発表で、普段聞けない心情面から力強い発表まで大変勉強になりました。中でも日産玉川病院の佐藤敦子先生のGlobal meetingでのご活躍は際立っておりました。

当院からは過去最多の6つの演題を出しており、大変貴重な経験をさせていただきました。私の発表は、膝人工関節と高齢者社会をかけ合わせ、両側同日人工膝関節置換術の治療成績や合併症を中心にpropensity score matchingで背景を揃え検討しました。高齢者においても片側例だけでなく両側例も治療成績は良好というのは以前から報告されておりますが、合併症には特徴があり輸血を伴う貧血や転倒による骨折は増加傾向でありました。今後はADL推移の検討から手術時期の最適化までさらなる検討が必要と考えております。

学会では普段お会いできない多くの先生方に出会い、より気軽に質問もさせていただける素晴らしい機会であることを改めて感じました。

最後になりましたが、お忙しい中、手厚いご指導をいただきました、吉村先生、高橋徹先生はじめサポートしていただいた先生方にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

ページトップへ戻る