第14回 最小侵襲脊椎治療学会 (MIST学会) 参加報告

第14回 最小侵襲脊椎治療学会 (MIST学会) 参加報告

大学 山田 賢太郎

岡山・倉敷で628日から29日に開催されました脊椎外科の第14回最小侵襲脊椎治療学会(MIST学会)に参加してまいりました。MISTとはMinimally Invasive Spine  Treatmentの略であります。当初は脊柱を低侵襲に安定化する手技の総称であるMIStMinimally Invasive spine Stabilization)の安全な普及を目的に、学閥や施設の垣根を越えて“ALL JAPAN” の精神のもと日本MISt研究会として2009年に発足しました。その後脊椎固定手技だけではなく、低侵襲除圧手技や手術支援技術、診断・保存治療・予防/再生医療などよりグローバルな治療アプローチも含有し、10周年の2019日から現在のMIST学会へと改名されました。今回は2010年の第1回日本MISt研究会から数えて第14回の学会であり、川崎医科大学 中西和夫会長、香川県県立中央病院 生熊久敬副会長として開催されました。

本学会のテーマは「チームビルディング」で、医師からではなくコメディカルからの演題を中心としたセッションが丸一日割かれていました。またMIST学会は2025年度からは脊椎関連学会の合同学会となる予定ですので単独開催が最後の本年では中西会長が趣向を凝らしたプログラムを構築されました。各地域で規模は小さくとも工夫を凝らした治療法を紹介する「秘密のケンミン治療法」、スマホを使って演者のスライドにコメントやリアクションを飛ばせるアプリを導入した聴衆参加型「ワクワク会議」、M1グランプリをオマージュした独自開発したMIST機器を紹介する「発明-1グランプリ」など初めて目にする企画が目白押しでした。

最近のMIST領域では医科歯科大学ではまだ導入していないロボット手術や、脊柱管内治療(ISCT)、全内視鏡、UBE(Unilateral Biportal Endoscopy) / BESS(Biportal Endoscopic Spine Surgery)、またこれらを使用した椎体間固定などの演題では、大学からよりも地域の病院で頑張っておられる先生方からの発表が多く印象的でありました。

個人的に興味があったのは成人脊柱変形をopenの手技で行われる済生会横浜市東部病院の福田健太郎先生とMIS手技で行われる洛和会丸太町病院 原田智久先生のタイトルマッチとして企画された「ワクワク会議」でございました。わたくしは個人的にお二人とも以前に実際に手術見学に行かせていただき、そのこだわりの技術と熱意で尊敬する先輩でございました。従来通りのopenとかMISとかの名称より大切な事は、より良い手術成績を目指して先人たちがどうしてきたか、自分で何ができるか必死で考え、実践する熱意が一番重要なのだと、全く違う術式を行う先生方の共通点を改めて感じさせる本学会一番のセッションでもありました。

東京医科歯科大学関連からは埼玉石心会病院 角谷智先生がUnirateral open TLIFを「秘密のケンミン治療法」で、済生会川口総合病院 坂井顕一郎先生が頚椎椎弓切除制動術の試み、私から頚椎前方術後管理プロトコールの有用性の一般演題で発表がありました。

九段坂病院 大谷和之先生は「脊柱変形矯正固定術における術中モバイルCTとナビゲーションの有用性」をモーニングセミナーでご講演いただき、九段坂病院での脊柱変形手術の歴史からナビを用いたより安全・確実な手術を勉強させていただきました。

また座長を吉井俊貴教授、講師に平井高志先生/済生会川口総合病院 沼野藤希先生を迎えたオール医科歯科大学での「骨粗鬆脊椎に対する骨セメントの使用」に関するランチョンセミナーがあり、土曜日の昼にも関わらず多くの聴講者がおられました。

学会参加者はこれまでのMIST学会で最高の529名でした。大きな症例数など臨床研究的な演題が重視される主要学会と異なり、症例数は少なくとも趣向を凝らした治療法や治療経験の演題が多い本学会は一臨床医としての私にとっても楽しく勉強になる学会で、参加の皆様も同じ感想をいただいていたようです。

私は初めてのMIST学会参加でございましたが、日本MISt研究会/MIST学会は学会のみならず学会終了後に行われる「本音会」が共催されます。学閥や地域を超えた交流ができるのも本学会の大きな魅力でありました。本学会参加を快く許可いただきました東京医科歯科大学医局の先生方に感謝申し上げます。

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