第59回日本整形外科学会 骨・軟部腫瘍学術集会 参加報告
黒澤 紀雄
例年梅雨明け前後の7月に開催される「日本整形外科学会 骨・軟部腫瘍学術集会」ですが、今年は7月9日〜10日に名古屋の中日ホール&カンファレンスセンターにて開催されました。
本学会は例年、前日に開催される「JCOG若手の会」という親睦会から火蓋が切って落とされます。今年も全国各地から若手骨軟部腫瘍医が集う中、私も当科腫瘍班への入班を考えてくれているT先生とともに参加しました。
整形外科の中でも骨軟部腫瘍専門医は全国に300名弱(全体の1%程度)しかおらず、専攻医プログラム等で専門施設を回らないと触れる機会が少ない分野です。しかしその分、全国の先生方とのつながりは広く深く、アットホームな交流が広がっています。若手の会も、専門医取得前後の若手からベテランの先生方までが集い、同じ苦労や問題意識を持つ仲間と創意工夫や知識をラフに共有できる大変貴重な場です。がん研で研修された同士のみならず、数少ないとはいえ同世代の若手がいることに刺激を受けられる、とてもいい機会でした。
学会1日目、同門の先生方の勢いは凄まじいものでした。
第1陣として有賀茜先生が、JOA総会から旋風を巻き起こしている免疫微小環境から浸潤型軟部肉腫の生物学的特性の解明を試みた研究成果をご発表されました。腫瘍学的に激アツな内容で、米国整形外科学会(AAOS 2027)での招待発表にも採択されている素晴らしい成果です。

さらに別会場では、日本整形外科学会理事長の河野博隆教授が座長を務められる中、佐藤信吾先生がOnco-orthopedicsの展望についてシンポジウムでご講演されました。また、がん研有明病院の谷澤泰介先生、齊藤正徳先生の発表も並行して行われ、開始直後からフルスロットルです。

本学会の会長であられる名古屋大学の西田佳弘先生が長年取り組まれているのは、デスモイドや神経線維腫症といった「生死に直接関わることは少ないが、再発を繰り返し治りもしない」という非常に厄介な難治性の中間群腫瘍です。私のシンポジウムのテーマが、まさにこの代表格といわれる、デスモイド腫瘍でした。
デスモイドは船内雄生先生の言葉をお借りすれば「Enigma(難解な謎)」であり、急速増大や自然退縮もありうる予測不能な経過をたどる軟部腫瘍です。同セッションでは船内先生より、近年の世界的な潮流である「切らずに共存する」というパラダイムシフトについてご提示いただきました。

その中で外科医として、あえて「切って治す手術のメリットと功罪」に焦点を当てた発表をさせていただきました。現代の潮流に一石を投じる内容であったため会場にはいささか緊張が走ったかに感じましたが、座長の先生方やフロアからも多数のご質問やコメントをいただき、大変盛況のうちに終えることができました。これまでの緊張と準備の苦労が報われたように思いました。

その後も同門の先生方の活躍は続きます。
がん研部長の阿江啓介先生は、休む暇もなくランチョンセミナーにて腫瘍用人工関節の総論および長期成績についてご講演され、立ち見が出るほどの盛況ぶりでした。

また、がん研の副部長になられた早川景子先生は、神経線維腫症のシンポジストを務められただけでなく、お一人で3演題をご発表されました。日頃の多忙な臨床・手術をこなしながらいつ準備されたのかとおののくほどのスーパータフネスで、学会場を飛び回っていらっしゃいました。

今回、同門からのシンポジストは計6名。特に骨盤腫瘍セッションでは、全国屈指の重鎮が集う中、がん研の齊藤先生が一切緊張を見せることなく、骨盤手術後の歩行再獲得因子についてスマートに講演されました。
夜は松本誠一先生を囲み、腫瘍班の懇親会が開催されました。
2日目のポスターセッションに向けて昨年がん研で研鑽を積まれた砂田憲吾先生をはじめ、大槻祐太先生、齊藤郁斗先生、後藤周平先生、中村錬先生、さらに国内留学で来られている秋田大学、奈良県立医科大学、山梨大学の先生方も交え、賑やかな宴となりました。このように各地の大学から先生が集まり、共に学べるのも、腫瘍班の大きな魅力です。

学会2日目、埼玉県立がんセンターの五木田茶舞先生はAYAがんのパネルディスカッションに登壇されました。小柳広高先生とともにがんロコモの第一人者であり、AYA世代がんの研究会の理事も務められております。単にプレイヤーとしての外科医というだけでなく、枠組みを超えて、自分を活かせる、頼り・頼られる位置にいることが、われわれ腫瘍班としての幸せなのかもしれないと感じました。

ゲーテの言葉に “Man erblickt nur, was man schon weiß und versteht.”(人は、すでに知っていて理解しているものしか目にしない) とあります。
普段の診療では深く触れる機会が少ない分野かもしれませんが、腫瘍の世界は知らなければ、理解しないまま見過ごしてしまっていることが多いのかもしれません。その深淵を覗くと、運動器のみならず全身の解剖や機能に対する洞察、外科医としての心得、腫瘍学的な戦略、そして患者さんの人生に寄り添うドラマが詰まった非常に面白い世界です。もし少しでも腫瘍の世界に興味がある方は、是非声をかけてください。