米国臨床腫瘍学会 ASCO Annual Meeting 2024 参加報告

米国臨床腫瘍学会 ASCO Annual Meeting 2024 参加報告

大学院 有賀 茜

2024年531日から64日の5日間にかけて米国ChicagoMcCormick Placeで開催されたASCO (American Society of Clinical Oncology) Annual Meeting 2024に参加しました。

ASCOはがん治療に関する世界最高峰の学会であり、「がん治療研究のオリンピック」とも言われています。本年の学会参加者は約45000人、世界中で研究されているがん治療の最新知見が発表されるため、毎年学会中にリアルタイムで速報を流すサイトも存在するほど影響力の大きい学会です。また、あらゆる分野のがん治療研究者が世界中から演題を応募するため、採択率はPoster sessionでも10% 以下という非常に狭き門であることでも有名です。

 

私は現在、肉腫のヒト手術検体を用いたゲノム解析を行っていますが、今回は指導医である船内雄生先生からお声掛けいただき、幸いにもポスター演題が採択され、現地で発表する機会を得ました。船内先生は事務局を務められている「JCOG2102 切除可能高悪性度非円形細胞軟部肉腫に対する術前術後補助化学療法と術後補助化学療法のランダム化比較第Ⅲ相試験」を発表され、多くの注目を集めていらっしゃいました。たまたま私のポスター設置場所が、「JCOG1802第Ⅱ相試験結果における進行軟部肉腫の二次化学療法としてパゾパニブの有効性」を発表された九州大学整形外科の遠藤誠先生のお隣であったため、遠藤先生のポスターに集まった大観衆が、ついでに私のポスターにも立ち寄って質問してくださり、多くの研究者と議論・意見交換することができました。

ASCOの肉腫部門では、新規薬剤、免疫チェックポイント阻害剤と既存殺細胞性抗がん剤の併用、ctDNAや特定のtranscriptomeによる予後予測などのトピックが多い印象でした。また、免疫治療やTMEtertiary lymphoid structureなどに代表される免疫関係の着眼点も非常に多く見られました。 既存の手術加療ではplateauに達した肉腫治療に対し、game changerとしての新規治療開拓がどんどん進んでおり、heterogeneityの高い肉腫に対して個別化医療が実現する日も遠くないと感じました。個人的には、最新のNatureLancetに論文を執筆されている研究者が会場を普通に歩いていらっしゃる風景に感激していました。

 

現地発表に採択された発表者には、Plenary sessionOral sessionPoster discussionPoster sessionなど採択項目によって色分けされた特別なバッジが贈られ、人混みの会場内でも瞬時に判別できるようになっています。複数のバッジを付けていたり、数枚しかないPlenary sessionのバッジを付けている研究者は、周囲から一目を置かれます。私もposter sessionのバッジを付けて歩き、一時的な満足感を得ながらも、いつかはもっと上の色のバッジを付けて参加してみたいと思いました。

 

高層ビルが所狭しと立ち並ぶ近代的な街並みの中にも、 劇場や美術館が介在し、街全体が美術作品のような大都会Chicagoの景観は圧巻の一言でした。発表当日は大雨で、ホテルから駅方面へ渡る橋が上がって渡れなくなっていたり、電車が止まって暴動が起こるなど、マイナートラブルもありましたが、船内先生をはじめ多くの先生方にサポートしていただき、非常に充実した時間を過ごすことができました。

今回の学会中に得た様々な刺激を糧に、また気持ちを新たにして臨床研究に意欲的に取り組んでいきたいと思います。ご指導いただいた先生方には心より感謝を申し上げます。

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