第57回日本整形外科学会骨・軟部腫瘍学術集会 参加報告

57回日本整形外科学会骨・軟部腫瘍学術集会 参加報告

大学 有賀 茜

2024711日から712日にかけて福井市のフェニックス・プラザで開催された第57回日本整形外科学会骨・軟部腫瘍学会に参加致しました。

まず能登半島地震において被災された方々には、心よりお見舞いを申し上げます。福井駅近郊の美しい街並みからは想像できませんでしたが、県内でも多くの方々が被災されたとのこと、隣県・石川も含め被災地の一刻も早い完全復興を願うばかりです。

今年3月に北陸新幹線が金沢から敦賀まで延伸され、福井駅へは東京駅から直通約3時間半で行けるようになりました。学会テーマ「格致」は、幕末に開国論を主張し大政奉還を実現させた福井藩主・松平春嶽が愛した言葉とされ、「物事の道理や本質を深く追求し、理解して、知識や学問を深め得ること」を意味するそうです。そんなテーマにふさわしく内容盛りだくさんであった学会の一部をご紹介致します。

全日程を通して、当教室からは計19演題(うちシンポジウム4演題、パネルディスカッション1演題)の発表がありました。松本先生は骨腫瘍診断におけるTRACP-5bの有用性の検証と、小児・AYA世代の肉腫治療のシンポジウムで座長を務められました。松本先生は毎年必ず新しい演題発表を継続なさっていると伺い、本当に敬服するばかりです。眞鍋先生は転移性骨腫瘍セッションの座長を務められ、福井県でもサウナをお楽しみになったようです。私が5年前に埼がんでお世話になった時のことを鮮明に覚えていてくださり、とても嬉しく思いました。阿江先生の教育研修講演は、川口先生の時代からがん研が継承・発展させている切除縁の概念から、再建、ナビゲーションや内視鏡を使用した最新技術まで、まさに骨・軟部腫瘍手術の格致を聴こうと会場は満席の盛況でした。五木田先生は埼がんにおけるがんロコモ対策の取り組みを発表され、帝京大の河野教授や慶應義塾大の中山先生が大絶賛なさっていました。埼がんのがんロコモYouTubeはとても分かりやすいので、皆様も是非ご覧ください。また、齊藤先生の「骨盤発生腫瘍切除後の骨盤輪変形と歩行能力についての検討」と本橋先生の「CT画像から脊椎転移を検出するための新たな深層学習アルゴリズムの開発」はBest presentation awardにノミネートされ、学会の注目の的でした。

  

私は今回、分不相応にもシンポジウムとパネルディスカッションに採択していただき、現在、船内先生とがん研、近畿大学で共同研究を進めている手術検体を用いたトランスクリプトーム解析について、それぞれ骨肉腫、浸潤性軟部肉腫のテーマで発表しました。質疑応答を含め合計30分以上の発表を準備することは今回が初めてで、不安と緊張でいっぱいでしたが、研究を統括してくださっている阿江先生、直前までご指導いただいた船内先生、たくさんご迷惑をお掛けしてしまった佐藤先生、サポートしてくださった全ての先生方に深謝致します。偶然にも、先日Chicagoの米国臨床腫瘍学会(ASCO)でご一緒させて頂いた先生方がシンポとパネルの座長を務めてくださり、セッション前の打ち合わせから優しく声を掛けて頂き、緊張が緩和されました。他施設の先生方からも、セッション後に研究の具体的なアドバイスも頂き、人脈のありがたさ、そのきっかけをいつも作ってくださる船内先生へ改めて感謝致しております。このような大会場で発表する機会はこれが最初で最後かも知れないと、発表後は少し胸が熱くなりました。

入局後間もない林田先生と徳元先生の活躍も大変印象的でした。私もレジデント時代から多くの先生方にご指導頂き、その時の御恩は現在も自身のモチベーションとなっています。医科歯科整形の屋根瓦式の指導体制は改めて素晴らしいと感じ、たくさんのご指導を頂いた私自身も、いつか次の世代へ繋がるような働きをしたいと思いました。

学会全体としては、加速するがん遺伝子パネルの臨床応用、新規殺細胞性抗がん剤の併用法、世界情勢下にサプライチェーンの逼迫が生じている腫瘍用人工関節の新たな課題など、既存の手術に加え新規治療標的の探索を介し、希少がんの生存率向上に多方面からいかに立ち向かうかを焦点としている発表が多い印象でした。

未熟者ですが精進して参りますので、今後ともご指導ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。

 

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