INSEP-JSC共催 国際カンファレンス 参加報告
大学 小柳津 卓哉
2025年3月26-27日にフランス、パリにあるINSEP(France’s National Institute of Sport, Expertise, and Performance:フランス国立スポーツ体育研究所)で行われた、INSEPと日本スポーツ振興センター(JSC)との合同カンファレンスに柳下和慶教授と招待いただき、参加いたしましたのでご報告させていただきます。JSCは国立スポーツ科学センター・味の素ナショナルトレーニングセンター・戸田艇庫・味の素フィールド西が丘を統括しており、国際競技力向上のための連携・協動・研究・支援を行っています。
このカンファレンスは「日本スポーツ振興センター(JSC)は、フランスの国立スポーツ体育研究所(INSEP)と、2014年3月から連携協定覚書(MOU)を締結しています。パリ2024オリンピック・パラリンピック競技大会を控えた2023年には、HPSC を結節点に両国のハイパフォーマンススポーツ人材の育成に資する協力体制として、両組織にワークスペースを設けるなど国際共同研究や人事交流などの連携基盤の更なる強化が進んでいます。この度、INSEPとJSCは双方の国際ネットワークを活用し、お互いの研究成果を含む最新の情報を国際的に発信・共有する機会として、国際カンファレンスを共催いたしました。」(JSC HPより)というコンセプトのもと、「環境ストレスを利用したピークパフォーマンスの達成:エビデンスから道筋を探る」というテーマで開催されました。
高気圧治療部は酸素と骨格筋に関して研究を行っておりました関係で、酸素という環境ストレスが骨格筋再生を促進するという内容で発表させていただきました。ヨーロッパと日本のオリンピックサポートレベルのトレーナーの先生方とのカンファレンスとなり活発な議論が行われました。多くは『リビングハイ・トレーニングハイ』という高地トレーニングのテーマでの、実際のトレーニング状況(暴露期間・時期・トレーニング内容)とその成果およびトラブルシューティングが中心で、酸素の視点からすると低酸素環境がテーマとなっていました。オリンピックレベルでのトレーナーの会議ですので、より実践的な内容となっていて具体的な反面、あくまで経験談の上に立っている内容でありました。我々の発表は酸素という点では対極の高濃度酸素、また、臨床・基礎データに基づいた内容でしたのでむしろ興味深く聴いていただいたためか、活発な質問をいただきました。
低酸素と高酸素、ともに有効であるという考えは一見矛盾してますが、一元的な説明は可能で、「酸素濃度そのものよりも酸素濃度の変動に対する生体反応(抗酸化反応の惹起や相対的低酸素に対する生体反応)が生体に対して有効に働く」と考えられるのではないかという方向で話が進みました。高気圧治療部でも抗酸化反応に注目して現在研究を進めており、カンファレンスの内容が研究の方向性と一致たことは今後のモチベーションにつながりました。
個人的には初めての欧州となりました。町が清潔かはともかく、街並みは洗練されていて統一感があり、端々に米国や日本との違いを感じました。歴史のある建物に現代の店舗がなじんでいる姿が、歴史を尊重する風土を反映しているように感じました。食べ慣れている日本食にはかないませんが、食事も美味で、もっと早く訪れていればよかったと思います。
海外での講演は、カンファレンスだけではなく、その国の街並みや食事、人との交流を通じて異文化に触れることができる貴重な機会です。ついつい腰が重くなりがちですが、今後も機会を探して積極的に参加したいと思いました。
最後になりましたが、機会をいただいた柳下先生、出張中に高気圧治療部でご対応いただいていた星野先生・安先生、ありがとうございました。