足関節後方インピンジメント症候群(三角骨障害など)

病態・症状

概要

足関節後方インピンジメント症候群は、足首を伸ばす(つま先を伸ばす)動作をした時に、足首の後方が痛くなる病態を特徴とする症候群です。足首を伸ばす動作を頻繁に行うバレエダンサーやサッカー選手に多くみられます。

痛みの原因と典型的な症状

三角骨障害など組織のインピンジ

足首を伸ばした時(つま先を伸ばした時)の足首の後方の痛みが特徴的です。足首を最大限に伸ばすと、脛骨・距骨・踵骨という骨が足首の後方の1点に集まるため(写真)、この部位に介在する組織が圧迫され、痛みの原因となります。

足首を伸ばすと矢印の部分に骨が集まります

原因としては、三角骨が代表的です。三角骨は、距骨の後方にできる過剰な骨で、約10%の人に生じるといわれています。足首を伸ばすと、三角骨が周囲の骨に挟まれます。三角骨があれば必ず痛みが生じるわけではありませんが、足首を伸ばす動作を何度も繰り返すなど負荷が加わると、痛みが生じる場合があります。三角骨の他に、距骨の後方に骨が伸びている場合も、同じように挟まれて痛みがでる場合があります。また、三角骨や骨の突起がなくても、足首を伸ばした時に関節の膜や足首の後方の靱帯などが挟まって、痛みを誘発することもあります。

つま先を伸ばした時に、三角骨(矢印)が周りの骨に挟まっています

長母趾屈筋腱障害

バレエダンサーでこれらにしばしば合併する病態として、長母趾屈筋腱障害があります。長母趾屈筋腱というのは足の親指の関節を曲げる腱で、長母趾屈筋腱障害では、足の親指を曲げ伸ばしすると、ひっかかり感や痛みを感じ、音が鳴ることもあります。これは、親指を曲げる腱が足首の後ろでひっかかって生じます。

診察・検査

痛みの位置や痛みを誘発する動作などを詳しく診察し、レントゲン・超音波検査・MRIなどの画像検査の結果を合わせて病態を判断します。

治療

保存療法

痛みを生じている部分への負荷を減らし、炎症がある場合はそれを抑えるよう治療します。痛みを生じている部分への負荷を減らすためには一時的に足首を使いすぎないようにすることも必要ですが、根本的な原因を解決して再発を防ぐために、局所への負荷を減らして動けるようにすることも大切です。特にバレエダンサーでは動き方の癖が問題になる場合があり、理学療法士と協力して、可動域(関節のやわらかさ)・筋力・バランス能力・身体の使い方などを評価し、必要時は足首の後ろに負担のかかりにくい動きの習得をサポートします。
痛みが強い場合は、必要に応じて痛み止めや炎症止めの飲み薬や注射も用います。

手術療法

手術適応

保存療法を行っても痛みがなかなか改善しない場合、あるいは組織の損傷が激しく保存療法の効果が見込めない場合は、手術を検討します。

手術方法

当院では、内視鏡を用いた小侵襲の手術を行っています。アキレス腱の両側に約7mm程度の皮膚切開を一つずつ作り、カメラと内視鏡用の器具を用いて、三角骨や炎症を起こしている組織の切除を行います。また、長母趾屈筋腱の腱鞘を切開し、腱のひっかかりを解除します。

左は手術前(矢印は三角骨)、右は手術後(三角骨切除後)のレントゲン

手術中に内視鏡で観察した足関節の後方。
左)長母趾屈筋腱腱鞘の開放。矢印は傷んだ長母趾屈筋腱。 中央)*は三角骨 右)三角骨の摘出

術後リハビリテーション

手術後早期から足首を伸ばした時の痛みの改善が見込めますが、痛みが長期間続いていた場合、痛い部位をかばって足首の動かし方に癖がついていたり、必要な筋力が落ちていたりする場合が多く、手術後はリハビリテーションが必要です。復帰に向けて、リハビリテーションを行います。

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