病態
いわゆる圧迫骨折といわれていた、椎体に生じた骨折です。比較的弱い外力によっても生じる骨粗鬆症によるもの、転移性骨腫瘍による病的椎体骨折、そして強い外力により生じる外傷性椎体骨折などがあります。
老人におこるものは胸椎と腰椎の移行部(胸腰移行部:第10胸椎から第2腰椎まで)あたりの椎体に生じ、ほとんどが骨粗鬆症に起因して尻もちなどの軽微な外力により生じるものです。尻もちなどの外力により、力が集中したところの椎体の前方がつぶれくさび形になります。
強い外力により骨折が生じた場合には、椎体前方だけで済む場合もありますが、脊椎椎体が後方要素を含め、全体につぶれて不安定になり、脊髄の通り道(脊柱管)に及び、脊髄の麻痺を生じることがあります。
症状
腰や背中の痛みを訴えることが多いですが、いつのまにか骨折といわれるように痛みが軽いこともあります。そして、多数の場所に椎体骨折が生じると、背中が丸くなり、身長が低くなります。
強い外力により生じた場合には脊髄損傷を生じる場合もあります。部位にもよりますが、胸腰移行部に生じた場合には、重症では下肢麻痺や膀胱直腸障害(おしっこがでない)など、さまざまな症状を呈します。
検査
レントゲン
典型的には椎体の前方の高さが減少し、くさび形となります。しかし骨折初期では骨折が分からないことも多く、レントゲンで所見がないからと言って本疾患を否定することはできません。
MRI
骨折初期を検出する最も優れた検査です。急性期の骨折部はT1強調で低信号を呈し、全くずれていない骨折も検出することができます。また脊髄や馬尾神経、神経根の圧迫の評価にも有用です。
CT
骨折の形態や骨癒合の判定に有用です。ただし骨折の初期ではCTでも検出できないことがあることには注意が必要です。
骨密度検査
骨粗鬆症が疑われるものには骨密度を測定します。一般に弱い外力で生じた椎体骨折を生じた患者さんは骨粗鬆症と診断されます。
治療
骨粗鬆症による軽度の外力による骨折の場合は、コルセット(硬性・軟性)などの外固定をし、前屈(お辞儀する動作)を禁じ、比較的安静にします。安静にすることで、2~3か月ほどでほとんどが治ります。その一方で、我々の研究によると、65-85歳の女性の骨粗鬆症性椎体骨折の方のうち、受傷後48週の時点で17.5%の方が偽関節(骨癒合が得られない)となっていました。
また、強い外力によるものでも、麻痺がない場合にはギプスや装具などで外固定するのが基本になります。
但し、椎体の変形が重度であったり、骨折部の不安定性が強かったり、脊柱管(脊髄部)がすれたり骨片で圧迫を受けていたりしている場合や、いつまでも疼痛が残るもの、高齢者で生活の質が著しく障害されているものには、手術が必要になることがあります。術式はセメントを用いた椎体形成術が一般的ですが、椎体形成術に固定術を加える場合などもあります。